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Vol. 183 骨髄バンクに、もう天下りはいらない(その2)

医療ガバナンス学会 (2010年5月28日 15:00)


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~公益法人の事業仕分け、天下り根絶は「新しい公共」実現への試金石
山崎裕一(元骨髄移植推進財団事務局総務部長、現在、復職を求め裁判中)

2010年5月28日 MRIC by 医療ガバナンス学会 発行  http://medg.jp


3.傍若無人な天下りの言動~植民地としての公益法人、天下りが常態化(続き)
平井全氏について(在任期間:2007年4月~現在、在任中)

07年4月に、1年間不在だった天下りが再びやってきた。元キャリア官僚の平井全氏である。財団の常務理事として、現在もその地位にある。

堀之内敬氏の問題言動は、主に事務局職員に対するものだったが、平井全氏の問題言動は、骨髄バンク事業を市民・国民の立場から、善意から支援しているボランティアの方々に対し、異常な高圧的な態度でとり、傷づけていることにある。こうした言動に対しては、幾度も抗議を受けているが、反省するどころか居直った対応が続いている。
さらに、問題なのは、正岡理事長、伊藤副理事長など執行部が、こうした事態を放置し、全く改善する姿勢を示さずにいるため、まさに、天下りのやりたい放題となっていることである。

平井氏の言動、所業については、NPO法人全国骨髄バンク推進連絡協議会(理事長・中野勝博氏)から、骨髄財団の正岡理事長あてに、何度も正式な質問書、要望書が出されているが、特に問題視された事例を列記する。

1)08年1月、骨髄財団は、骨髄バンク草の根の活動推進事業について、支援ボランティア団体の同意もないまま、一方的に、各地のボランティア団体に業務委託するという実施要項を発表。事前の協議で、この事業委託に疑問を呈したり反対したボランティア代表者に対し、ボランティアは財団から頼まれたことをやれば良いんだ、自分(平井氏)の意見に反対するような団体は、ボランティア団体とは言えない。という発言までしたことから、質問書が出されたが、まともな返答はなかった。

2)08年10月、NPO法人全国骨髄バンク推進連絡協議会の大谷貴子会長が、永年にわたる血液疾患患者・家族に対する支援稼働と骨髄バンク支援活動に対し、第一生命の保健文化賞を個人受賞した。平井氏は、大谷さんが保健文化賞を受賞出来たのは、私が推薦してあげたからだ。最近の全国協議会は、財団や私への非難ばかりしており、患者さんのための活動を何にもしていない。という趣旨の発言。

3)08年12月
「骨髄移植1万例、さい帯血移植5千例到達、ありがとうキャンペーン」実行委員会が何度か開催されたが、ボランティア団体の代表者に対してだけでなく、厚労省担当者(後輩であるノンキャリア官僚)に対しても、平井氏は、高圧的な言動を繰り返し、特に、厚労省担当者が意見を述べたことに対し、「だまれ、若造が」という暴言を吐いたこと。会議を纏めるのではなく、自己の主張に同調しない意見は無視するという態度に、NPO法人全国骨髄バンク推進連絡協議会から財団に質問書を提出するが、問題ないと回答。逆に、ボランティア団体を財団の月例公式ニュースレター(マスリーレポート)で非難までする始末。

4)09年3月
骨髄財団の理事会改選にあったては、NPO法人全国骨髄バンク推進連絡協議会の代表者に慣例として、理事(常任理事)を推薦してほしいとの依頼があった。そこで、野村正満副会長を推薦したところ、理由を示さず拒否された。同年3月末に開催された財団評議員会で、この件についての四方田氏の質問に対し、正岡理事長は、「野村氏は、財団を非難ばかりしている首謀者、山崎裁判にも関係している。財団の理事としては不適格」という趣旨の説明をした。こうした事実は全く、個人の誹謗中傷する発言があったこと。

5)09年春、財団は、毎年のように全国のブロック毎に「ドナー登録説明員研修会」を開催しているが、東北地区を対象とした研修会において、平井常務理事に対し、福島県の吉田氏が、「野村氏の理事推薦をどうして拒否したのか?」と質問がしたが、その返答は、「野村は、支援ボランティアというより骨髄バンクを非難ばかりしている。いわばヤクザだ。そんな奴に理事をさせられない。」という誹謗中傷する発言があったこと。

6)09年10月、財団のマンスリーレポートに、長妻・厚労大臣が、天下り法人に対しては、補助金2割カットする方針が示され、骨髄財団もいわゆる天下り法人に該当しているので、そうした天下り法人から脱却するという、平井氏の署名入り記事が掲載された。今年3月の評議員会で、マンスリーレポートで自ら天下り法人から脱却すると書いておきながら、なぜ、辞めないのかという質問に対し、「国庫補助金が大幅削減される事態になっていない、大幅カットされる事態になったら、その時は何時でも辞める」という、開き直りの発言をしたこと。

平井氏のこうした言動を直接、見聞きしている職員たちは、前任の天下り官僚の堀之内氏が、辞めて、少しは良くなると思っていたが、ますます高圧的な言動が改まらないことから、抜擢、重用された一部幹部職員を除き、さすがに心を痛めている職員も少なくないが、怖くて、何も言えない状況。
天下り役人のこうした言動は、まさに、やりたい放題、傍若無人の態度であり一刻も早く是正が必要だと考える。

4.無責任で官僚べったりの理事会、責任を取るべき

財団の執行権を握っているのは、理事会である。23名の理事は、みんな非常勤で、かつ、報酬は無報酬である。常勤で有給の理事は、天下りの常務理事一人だけである。理事長、副理事長も非常勤である。従って、財団の日常業務や運営は、天下り官僚が仕切っており、問題な言動があっても、それをチェックし諌める機能は、基本的に無い等しい。

天下りのやりたい放題を放置され続けているもうひとつの大きな理由としては、理事会の構成メンバーの約半数が「充て職」という、いわば「名ばかり理事」が就任しているからである。全国知事会、日本医師会、歯科医師会、薬剤師会、経団連、NHKなど、日本の各界・団体の代表が理事職として割り当てられているが、そうした団体の代表者が実際に理事会に参加したことは、一度もない。理事会の議決は、すべて事前に理事長への委任状か書面評決で、賛成として提出されている。従って、理事会の議案は、事前に過半数の賛成票を確保されているのである。
また、骨髄バンクという医療に係わる事業であるため、骨髄移植や血液専門医師が理事の1/4程度選出されているが、厚労省の研究班の班長等を務めており、研究費補助金を受けているため、厚労省の天下り官僚には絶対に逆らわない、持ちつ持たれつの関係になっている。
さらに、常任理事会を構成している理事は、5年~10以上も同じメンバーが再任されており、硬直化が甚だしいが、誰も異議を言い出さない。その理由は、理事や評議員の人選は、天下りの常務理事が原案を考え提案するのが常であり、厚労省や理事長、副理事長には形式的な協議で決めているからである。

公益法人改革で、財団法人などのガバナンス(経営・運営についての自律的な統治)が求められている。骨髄財団のように、国民の命を救うという大切な事業を行っている団体であるにもかかわらず、未だにあまりにも無責任な理事会の対応が続いている。充て職理事の多くは、厚労省から頼まれた、名前だけを貸しているという程度の認識しかないのだろうが、こうした悪しき慣例は、この際、抜本的に改めるべきである。そして、公益法人としての真に自律的なガバナンスを確立する時期にあると考える。

5.終わりに~骨髄バンク改革は、「新しい公共」実現の試金石

鳩山総理は、民主党政権として、21世紀は「新しい公共」の創造こそが望まれていると高らかに宣言した。この、新しい公共の概念は、従来は行政や企業だけが公共という概念だと考えられていたものから、市民を主体とするNPO団体などが、自主的に地域コミュニティーに参加し実践することで、創造するもの。そのために、NPO団体への寄付控除の抜本的拡充、市民のボランティア活動への参画を積極的に進めることで実現されるとされている。
我が国の医療は、これまで、医師と患者という関係に限定され、とりわけ専門性が壁となり閉鎖性が強い分野だった。しかし、骨髄バンク事業は、善意の提供者が必要という、一般市民の参加が不可欠な制度である。ドナー登録者募集活動を初めとして、その発展には、広く市民に対し医療の情報公開が前提となるだけでなく、骨髄バンク運動を支える国民運動が必要であり、実際に、これまで20数年間にわたり、全国各地において市民ボランティア活動が、日夜、草の根的に行われきている。
医療分野では、骨髄バンクのボランティア活動は、献血事業と同様に、稀有な成功例であり、まさに、鳩山首相が提案している「新しい公共」の先進例ではないかと、私は考えている。

骨髄バンクに天下った官僚と、それに迎合する一部の学会幹部医師、身内を庇い合う官僚OBなどが務めている、現在の骨髄財団の理事長、副理事長、常務理事、常任理事たちは、こうした時代の動きに逆行するだけでなく、今もなお、その席に居座り続け、善意のボランティアの方々、心ある職員たちを弾圧し続けている。また、天下りに追従する事務局員だけを厚遇、昇進させて支配体制を強化している現実がある。一刻も早くこうした事態を改善し、国民のための骨髄バンク事業とすることが強く望まれる。

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