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Vol.178 不妊治療の「迷宮」から抜け出るために

医療ガバナンス学会 (2020年9月3日 06:00)


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こまえクリニック
院長 放生勲

2020年9月3日 MRIC by 医療ガバナンス学会 発行  http://medg.jp

私は東京都狛江市にクリニックを開設している内科医です。自らの不妊治療の患者体験から、クリニックに「不妊ルーム」というものを設け、2000年5月より、不妊に悩むカップルの相談、内科的な妊娠へのアプローチに取り組んでいます。

「不妊ルーム」は、自然妊娠と不妊治療の間に位置する、妊娠へのベースキヤンプという位置づけです。この場所で、現在までに、8,900例を超えるカップルの不妊相談、そして約4,000名のフォローアップから、2,000名を超える妊娠が出ております。

私は、下記のようなメールを頂くときに、医師としてやりがいを感じます。
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この度、無事に男の子を出産しました事をご報告いたします。

2015年に初めてクリニックを伺ってから、5年…
放生先生には大変お世話になり、感謝の気持ちでいっぱいです。

2017年に長女を、そしてこの度長男を授かる事が出来たのは、
私達夫婦にとって奇跡です。

2人の子の子育てができる日が来るとは、本当に夢のようです。
ゆっくりめのスタートで、40歳を迎える私共にとっては体力勝負ですが、
楽しみながら子育てをしていきたいと思います。
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そして、私なりの妊活・不妊カップルへの取り組みを、何冊もの本として出版してきました。
柔道、剣道、弓道など日本古来のスポーツは、「心」「技」「体」を重視します。それになぞらえ、妊娠には「心」「体」「技」が大切だと思います。

のんびりした「心」もちで、「体」をゆったりさせ、そしてしっかりした「技」、すなわちリテラシーを持つことが、妊活には大切であり、”急がば回れ”で妊娠にアプローチしましょうとメッセージしたいのです。

「心」「体」「技」の3章立ての本なのですが、第3章の「技」=リテラシーには、特別な意味があります。私が最初の本『妊娠レッスン』(主婦と生活社)を出版した2002年頃は、生まれてくる子どもの100人に1人が体外受精児でした。しかし現在では15人に1人が体外受精児となっています。

言うまでもなく妊娠はセックスの結果として生じるわけですが、体外受精においてはノン・セックスで妊娠することになります。その時カップルはそれをどう捉え、どう思い悩み、どう受け入れていったのか、実例から心情が伝わると思います。医療従事者が、患者サイドの気持ちを思いやるという意味でも、診療科を問わず役に立つと思います。

今回の本の執筆にあたり、私はいろいろな資料を調べましたが、体外受精の医療機関が、大都市、とりわけ東京都に密集していることに、とても驚きました。それで、本書では見開き2ページで、日本地図を載せ、都道府県それぞれの体外受精など高度生殖医療をおこなえる医療機関数を示しました。この地図は、私が常日頃感じている不妊治療への驚き、違和感が可視化されています。

そして最後に終章として、「働く女性へのエール」という章を加えました。今日、妊活につまずくカップルが増えているのは、女性の社会進出が進んだことと、結婚、妊活開始年齢の高齢化が、いわばコインの裏表の関係にあるからです。今の日本社会は、女性が労働市場で、優秀さ、勤勉さにおいて、男性に勝るとも劣らぬ活躍を示しており、女性力なくしては成り立ちません。

そうした女性たちこそが、これからの社会を変えていき、そして仕事も子育てもしやすい「ワーク・ライフ・バランス」→「ライフ・ワーク・バランス」社会を推進する原動力になって欲しいと願います。

私自身、妊活・不妊ということに関わってきて、ここ数年少子化ということを真剣に考えるようになりました。そして最近になって思うことは、真の少子化対策は、体外受精における公的助成等のお金の援助ではないということです。

この度の拙著『妊活力! のんびり ゆったり しっかり Book』(佼成出版社)には、カップルが自分たちの夫婦力に立ち返り、マインド・チェンジによる草の根からのボトムアップこそが、真の少子化への処方箋ではないか、そんな思いを込めました。一人でも多くの方に、手に取っていただければと願っております。

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