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Vol.214 現場からの医療改革推進協議会第十五回シンポジウム 抄録から(4)

医療ガバナンス学会 (2020年10月22日 15:00)


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2020年10月22日 MRIC by 医療ガバナンス学会 発行  http://medg.jp

現場からの医療改革推進協議会第十五回シンポジウム

11月7日(土)

【Session4】コロナ2 診療現場から-1- 15:00~16:00
●コロナ診療最前線の現場から
大橋 浩一

2月12日、都立墨東病院は初めての新型コロナウイルス感染症(COVID-19)患者を、ダイアモンドプリンセス(DP)号から受け入れた。厚労省が「中華人民共和国湖北省武漢市において、昨年12月以降、原因となる病原体が特定されていない肺炎の発生が複数報告されています」と発表し、武漢からのチャーター便から降りた方々の受け入れが相次いだのが1月末だった。
屋形船、DP号、クラスターの発生した近隣総合病院からの転院搬送など、予備知識が圧倒的に不足していた初期の段階より、軽症・無症状患者から最重症に至るまで多くの患者を受け入れ続け、院内感染も経験した感染症指定医療機関の内外で起きた事をまとめ、そこから見えてくる課題を検討し今後に活かしたい。
●新型コロナウイルスが与えた医療の現場への影響
麻田 ヒデミ

当クリニックは、外来診療・訪問診療・健診・障害児リハの4つを柱に運営を行っている。グループ会社には企業を対象とした集団健診、産業医活動を行う会社があり、ワクチンの集団予防接種事業も実施している。
そのため、医療を提供する対象者や地域は、診療圏の住民や訪問診療先の個人・施設の他にも地元企業や工場など多岐にわたり、活動範囲は県を超え広域となる。
クリニックの患者数の減少は一般に報道されているほど影響はなかった。計画的に出向く訪問診療を積極的に実施していることが大きかったと思う。
また、遠隔診療は新型コロナ発生前から導入していたが、今回の件でより積極的に活用するようになった。診療の質の向上はもちろん、受診者にとっては、いつでも医師とつながることが出来る安心感の方が大きかったように思う。
一方発熱やコロナ疑い患者への対応については、クリニックが努力して対応出来るレベルを超えており、行政や地域の医療機関がどのように役割を分担するかという、地域社会の課題が明確になったのではないかと思う。
産業医活動については、面談や産業医活動も特に問題なく実践することが出来て、特に遠隔診療やリモート会議の有効性を感じることが出来た分野である。
安全衛生会議は2回に1回は出向いたり、メンタル面談の実施など、移動が必要なケースも残るが、産業医としてより積極的に企業に介入することができる手ごたえを感じた。
業務上一番大きな影響があったのは集団健診の現場である。4月から健診車を使った健診は大企業を中心に大半が中止となった。現在は、年度内実施に向け順次再開している。
車内で構造的に発生する密の状態をどのように解決するかという課題はあるが、予防接種の実施など、集団健診の現場だからこそ出来る感染対策もあるように思う。
今回、クリニック、産業医、集団健診とそれぞれに異なる医療の現場で、異なる課題に直面することとなったが、それぞれのケースを改めて考察し、今後の新しい社会の在り方の中で、より良い医療に繋げていきたいと考えている。
●規制から文化へ-医療者の使命感を支えるために-
河北 博文

河北総合病院は杉並区と東京都と連絡を取り合いながら、COVID-19感染者の入院を受け入れてきました。これにあたり、その他の診療を大幅に制限せざるを得ませんでしたが、所属する職員の理解と結束のもと、救急医療体制を含め、命に関わる診療を継続しています。患者さん・職員・物流の導線が交わらないよう体制を整え、軽症から中等症・重症・重篤の状態ごとに他区の感染症指定病院などと連携を強化し、柔軟に運営出来るよう、今現在も努力を続けています。
東京における医療は、コロナ患者を積極的に引き受けてきた地域中核的な病院、療養機能を中心としコロナ感染症の診断・治療は対象としていない病院、さらに外来を主体とする診療所がありますが、それぞれコロナ感染症の影響を大きく受けてきたと思います。コロナの患者さんを積極的に引き受け、それ以外の機能を低下させた病院は、病床利用率や手術件数など例年に比べ半減していると考えられます。それ以外の医療機関は、受診者が受療を控えた為、通常の受診患者数が大幅に減少したと聞いています。これらの医療機関すべてに対し、国や都道府県、区市町村は、(1)診療報酬の上乗せ、(2)各種各項目に対する補助金、(3)給付金を含む各種手当、(4)損失補てんに対する繰入金、(5)融資などの経営支援を行うことが可能でしょうか。医療機関の経営者は、このことを念頭に経営を考える必要があるのです。
国や自治体の制度により感染者を減らすことには限界があります。経済とCOVID-19に対する施策を両立させるためには、市民が自主的に生活を変え、その場その場で振る舞いを変えることが求められます。そうした一人ひとりの変革が、生活の文化を創ることになります。そろそろ政策とともに、withコロナの生活文化の創生に取り掛かる時が来ているのではないでしょうか。
●PCR検査で陽性となった患者さんが抱える問題点、臨床現場から
和田 眞紀夫

当院の唾液PCR検査陽性例の抱えた問題点を、症例ごとに抜粋して解説する。
[症例1]練馬区コールセンターに電話するも、「コロナ疑いの人が急増していて保健所の検査は重症者でなければ受けられない」と説明された。当院の唾液PCR検査第一例目として唾液PCR検査(+)。会社の同僚にコロナ陽性者がいて、短時間ではあるがそばに寄って話をしたが、保健所からは濃厚接触者の認定は受けなかった。その後、呼吸苦が強くなって保健所が入院の適応と判断した。
[症例2]マスコミ関係の仕事で、1週間前に食事をしながら高齢者のお相手の取材をされた。唾液のPCR検査(+)。その後、嗅覚・味覚異常が残存。発症から10日後、保健所から連絡があり自宅療養解除でよいと言われた。胸部CT検査を希望され、当院と病診連携をしている総合病院に問い合わせたが、発症後10日が経過していてなおかつ症状が消失してから72時間が経過した段階では、コロナ感染としての胸部CT検査の適応ではないと説明された。現在、コロナの後遺症を診てくれる病院を探して受診することを考えている。取材相手のご婦人は保健所から濃厚接触者には認定されず、入所中の高齢者施設のマネージャーとご本人も検査は希望しなかった。
[症例3]地方出身で東京での一人暮らし。東京では当院以外に受診歴のある医療機関なし。うどんを食べても汁の味がわからず匂わない。唾液PCR検査(+)。保健所から連絡があり、ホテル滞在を勧められたが、現在すぐには入れない状況なので2~3日自宅待機するように伝えられた。なるべく外出しないようにとも言われ、食事はデリバリーなどを利用するように指示された。その後、5日間ホテルに滞在。この間、看護師の方と電話で相談していたが、ドクターの問診や診察は受けていない。嗅覚・味覚異常がまだ残っていたが、発症後10日が経過した時点で退院してよいと言われた。退院後の指示は何も受けていないとのこと。

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