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Vol.216 現場からの医療改革推進協議会第十五回シンポジウム 抄録から(6)

医療ガバナンス学会 (2020年10月23日 15:00)


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2020年10月23日 MRIC by 医療ガバナンス学会 発行  http://medg.jp

現場からの医療改革推進協議会第十五回シンポジウム

11月7日(土)

【Session 06】製薬マネー 16:40~17:15

●「透明性」だけで十分か。理想的な製薬マネー管理方法とは?
尾崎章彦

製薬企業から医療者や医療団体に支払われる種々の謝金や寄付金(製薬マネー)の規制において、「透明性」は主要なコンセプトであり、日本も例外ではない。実際、日本製薬工業協会に所属する製薬企業は、現在製薬マネーを自社のウェブサイトで公開している。ただし、これらのデータは閲覧性が悪い。そこでワセダクロニクルと医療ガバナンス研究所は、2016年度に公開された製薬マネーのうち医療者への謝金について独自に集計し、マネーデータベースとして2019年1月より一般公開を開始した。これまでに450万ページビューを記録している。2020年8月4日には、奨学寄付金などの医療機関やその下部組織への寄付金等も含む2017年度マネーデータベースを公開した (  https://db2017.wasedachronicle.org/  )。
一方で、疑問が残るのは、一般の方々がどの程度このデータベースを利用してくださっているのだろうか、ということだ。私たちが2019年にがん患者会会員を対象に実施したアンケート調査では、製薬マネーの存在についてご存知だったのはわずか4分の1だった。また、私が普段診療する乳がん患者さんの中にも、製薬企業と医療界の金銭的な関係についてご存知の方は少ない。一般の方々での認知度はこれをはるかに下回るだろう。 実際、私たちがお手本とした米国のOpenPaymentsプロ
グラムに関しても、実施前後で米国国民の製薬マネーへの認知度が変わっていなかったことが明らかになっている。それにもかかわらず、別の調査においては、Open Paymentsプログラムの開始後に医療職への信頼度が一律に下がったことが明らかとなり、「透明性」を重んじた現行の制度においても思わぬ落とし穴の存在が分かってきている。
これらの背景を踏まえ、今回の発表においては、どのようにすれば透明性を確保しつつ一般の方々の医療への信頼性を担保することができるのか、そして、そのために具体的にどのようなアクションが必要か、英国の共同研究者であるオジエランスキー氏らの意見も参考にしながら考えてみたい。
●製薬マネーデータベースはどのように作られたか
渡辺 周
辻 麻梨子

製薬会社は医師や大学などの研究機関に対する金銭の支払い情報を、日本製薬工業協会の定める透明性ガイドラインに従って公開している。製薬会社からの資金提供は、かつてディオバン事件などの論文改ざんの引き金となり、医師の薬の処方を歪める可能性もあるためだ。しかしその情報公開の実態は、透明性を確保しているとは言い難い。各社は支払いの一覧をPDFデータや画像データで公開しているが、患者や研究者がそのデータから支払い先ごとの総額を集計したり、他社と比較をしたりするのはほとんど不可能である。また、最新年度のデータのみを公開し、過去のデータを削除するケースも多い。
ワセダクロニクルは医療ガバナンス研究所と共同で、過去2年分の製薬マネーデータベースを作成し公開している。作成した2016年度版と2017年度版ではデータ取得の際に個人情報を入力する承認制をとっていた会社がほとんどであったことなどもあり、作業には膨大な時間と手間がかかった。例えば、同姓同名で所属が異なる医師がいる場合、現状の製薬会社の公開情報からはそれが同一人物であるかはわからない。そうした時、私たちは個別の医師名を1人1人検索し、病院の公開プロフィールなどを元に判別を行なった。そうしなければ、製薬会社と医師や研究機関の間でどのような金銭のやり取りがあるかという全体の構図が見えてこないのである。だからこそ全社の情報を一元的に集約したデータベースの存在が重要なのだ。
本講演では作成の過程を振り返りつつ、現在の公開のあり方の問題点とデータベースの活用方法についてお話しする。また、製薬マネーデータベースの公開は海外の調査報道機関においても試みられてきた。米国のプロパブリカやドイツのコレクティブなどの事例をもとに、海外ではどのような手法がとられ、その結果どのような変化があったのかをご紹介したい。

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