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Vol.218 現場からの医療改革推進協議会第十五回シンポジウム 抄録から(9)

医療ガバナンス学会 (2020年10月27日 06:00)


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2020年10月27日 MRIC by 医療ガバナンス学会 発行  http://medg.jp

現場からの医療改革推進協議会第十五回シンポジウム

11月8日(日)

【Session 09】コロナ4 製薬 10:40~11:20
●新型コロナワクチン:数千人規模の国内第III相ランダム化比較対照試験を!
谷本哲也

日本のワクチン開発の宿痾は、第III相の臨床試験が国内でまともに出来ないことだ。新型コロナウイルス感染症予防のワクチン候補として、世界中で200種類近くの品目が開発中である。数千人から数万人規模の第III相に基づき、実用化の可否を判断するのが国際常識だ。
海外の第III相を元に、数百人程度の国内データを付け足すだけで、日本での実用化を認める可能性が高い。しかし、日本発のワクチン候補もある中、最初から「国内第III相試験は無理」とすべきではない。
原因は不明だが、欧米諸国などに比べ、東アジア諸国では感染者数や死亡者数は大幅に少ない。欧米での第III相の結果を、そのまま日本に当てはめるのは無理がある。
また、安全性に対し日本の世論は敏感だ。一度失墜したワクチンへの信頼は容易には取り戻せない。過去には、おたふくかぜワクチンや、子宮頸がんなどを予防するHPVワクチンの安全性が問題となった。これらの接種率は長年低迷し、国際的には異常事態として見られている。
今回のワクチン開発では、従来とは一線を画すウイルスベクターやRNAなどの遺伝子改変技術を用いた品目が多く、安全性に未知数な面がある。
新型コロナでは、一部感染者に長期の後遺症も出現する。また別のウイルスでは、ワクチン接種後の感染で、かえって症状が悪化する事例もあり、新型コロナでも同じことが起こる可能性もある。
ワクチン接種後に体調不良が続く事例は、新型コロナでも多発するだろう。その原因は医学的には容易に判別できない。国が補償制度を設けたのはよいが、全ての対象者を賄える財源や国に対する薬害訴訟への懸念は残る。
国内第III相の実施には、多くの手間と時間、費用がかかる。しかし、数百人程度の日本人のデータを元に、その十万倍となる数千万人にワクチン接種を勧めることは正当化されるのか。
一般の世論の信頼を勝ち取るためには、せめて数千人規模の第III相ランダム化比較対照試験を国内で実施するべきだ。
●新型コロナウイルス予防ワクチン:早期実用化は現実的か
蓮沼翔子

新型コロナウイルス感染症の予防のために実用化されたワクチンは、今のところ日本には存在しない。感染者は2020年9月現在、世界で2,700万人を超え、いつ収束するかも未知である。
日本では東京オリンピック・パラリンピックが2021年に延期となり、開催にはワクチンが必須であるという人もいる。そのため2021年前半までの早期実用化に向け、厚生労働省は「ワクチン開発の基礎研究から薬事承認、生産に至る全過程の加速化により、実用化を早期に実現」するプランを発表した。米国でも同様に、「ワープ・スピード作戦」と名付けられたワクチン開発プランで2020年秋の実用化を目指し、1兆円以上の投資とともに実行されている。
一方で、新型コロナウイルスについては、一般的に耳にする不活化ワクチンや生ワクチンとは全く異なる、遺伝子を利用したカテゴリーのワクチンを中心に開発されている。「早期実用化」のため、迅速な設計と大量生産が可能な、メッセンジャーRNAワクチンやプラスミドDNAワクチン、ウイルスベクターワクチンなどの研究が進められている。
これらの遺伝子を利用したワクチンは、これまでほとんど実用化されていない。安全性や有効性をどこまで確認した上で「早期に多くの人に接種できる」のか不安が残る。不安要素としては、免疫原性が弱いこと、抗体依存性感染増強が起こるとの報告があること、実際に使用されたデータが少ないことなどが挙げられる。今後、臨床試験が進み多くの人に接種していけば、思いもしない問題が新たに見つかる可能性もある。
ワクチンが実用化されたとしても、多くの人が接種するまで普及しなければパンデミックに対抗できない。しかし、早期開発への不信感から、海外でのアンケート調査では人口の数十%が「実用化されてもワクチン接種を拒否する」と回答している。このような中、私たち日本人はどんな情報を知り、理解すればよいのか、考えたい。
●新型コロナウイルス感染症治療薬開発状況
細田雅人

昨年、世界では年間950万人が感染症で死亡、その1位は結核で、社会課題の3大感染症としてはHIV/エイズ、結核、マラリアが挙げられる。国際社会は、SDGsのゴール3に「すべての人に健康と福祉を(GoodHealth and Well-being)」を掲げた。そのような最中に突然、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)が1月に武漢で顕在化、春節を経て世界188の国と地域に一気に広がった。8月の下旬には、その死者数は1位の結核に匹敵する80万人を超え、今も増え続けている。一方で、中国は当初、COVID-19感染者の80%は通常の季節性インフルエンザと変わらず、15%は入院後に回復、残りの5%がIntensive Careを必要としたと発表。欧米を含む各国の状況は様々で致死率も大きな違いがあるが、日本の状況は概ね中国のこの数値と変わらない。
この原稿を書いている時点8月24日、日本は、累計感染者62,433人で全人口の0.05%、死者数は1,200人で全人口の0.001%であり、世界全体との比較では10倍程度の差がある。日本の全死者数は1日あたり3,830人、その内の10人程度がCOVID-19による死者数と言える。ちなみに昨年の日本の季節性インフルエンザによる死者数は3,571人であり、現時点では、COVID-19による死者数はその3割ほどである。
マスメディアの影響、東アジア以外の高い致死率の報道により、日本を含め致死率の低い国々においても恐怖が刷込まれ、社会基盤の経済は、27%マイナスと甚大である。第二次世界大戦の遠因である1929年の世界大恐慌を思い出さずにいられない。何としても治療薬と予防薬の開発が急務である。
全世界の製薬産業およびアカデミアがCOVID-19収束に注力しており、一つの疾患にここまで注力するこの様相も、世界が初めて観る光景であろう。現時点で3,099本の臨床試験が世界中で走っているが、日本は14本。承認薬も出て来ているものの、収束の決め手になりそうな薬剤はいまだない。本シンポジウムでは、COVID-19治療薬開発の現状と課題を整理したい。そして100年前のスペイン風邪規模のパンデミックとの比較において、日本の課題も述べてみたい。
●お役人や専門家の言うことって、みーんな意味不明、みたいな(笑)
小野俊介

この「現場からの協議会」の第1回からずっと申し上げてきたことを、今年も繰り返す。誰もサル的な大学教員の過去の言動など覚えていないのだから、ネタを使い回しても苦情は来るまい。
お役人や医者や研究者が医薬品がらみの案件で力説していることのほぼすべてが、意味不明である。政治家が意味不明なことを言うのはどの国でも常識だが、医薬品がらみで発せられる言葉はそれとは違う意味で意味不明なのである。
たとえば「コロナワクチンは有効性と安全性で適切に審査する」のだそうですね。まったく意味不明である。こんなバカげた台詞に誰も突っ込みを入れないなんて、皆さん在宅勤務しすぎて頭のネジが飛んでしまったのだろうか。コロナって恐ろしい。
有効性、安全性ってなんだよ、それ。誰ひとりとしてまともな定義(注:辞書的定義ではなく、意味論的なモデル)を与えていないぞ。薬機法にもそれらの意味は一行も書かれてない。なのに、なんでお前ら、有効性とか安全性とかいう言葉の意味を知ってるの? …ホントは知らないんでしょ?なんとなく、テキトーに、カッコつけて語ってるだけなんだろ? 正直に白状してごらん。サル的なおじさんは怒らないから。
驚いたことに私の主張は検証可能である。方法は簡単。役人や専門家連中がエラソーに発したコメントの語尾に「…的な(笑)」「…みたいな(笑)」を付け加えるだけでよい。ほれ、薄っぺらいタレントがよく使うヤツである。たったそれだけのことで彼らの言わんとすることがおそろしく鮮明になる。
「ワクチンの有効性と安全性を検証する、的な(笑)」
「審査の透明性を確保する、みたいな(笑)」
ほらね、いい塩梅にニュアンスが正しく強調されて、「そうそう、あいつらが言うことって所詮この程度のユルサなのよ」って気がするでしょ?
「治験では科学的・倫理的に高い基準を遵守する、みたいな(笑)」もよく見かける。いろんなところがちょっとユルい医薬品業界人(産官学すべて)の決まり文句である。彼らのいう「科学的・倫理的」がテキトーなのは昔からだが、「高い」倫理性っていうのも笑える。エベレスト山頂とかで論じる倫理のことだろうか? 製薬会社のホームページのCSRでは「わが社の社員は高い倫理観的な(笑)倫理観を持たねばならない」と正確に表現した方がいいですね。
医療・医薬品業界のおっさん・おばさんたちの台詞ってチョーウケる。マジまんじ。

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