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Vol.220 現場からの医療改革推進協議会第十五回シンポジウム 抄録から(11)

医療ガバナンス学会 (2020年10月29日 15:00)


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2020年10月29日 MRIC by 医療ガバナンス学会 発行  http://medg.jp

現場からの医療改革推進協議会第十五回シンポジウム

11月8日(日)

【Session 11】コロナ5 研究 12:05~12:50

●予備的邂逅のススメ:社会ネットワークモデルによる分析結果から
大澤幸生

withコロナ社会の構想は、COVID-19が去ったとしてもウイルスやデマ情報への感染と共存せざるを得ない人類にとって、普遍的な課題である。本講演は、従来から各種の社会的現象の説明に貢献してきた社会ネットワークモデルを一部改良し、ウイルス感染過程のシミュレーションを行った結果から始まる。その結果とは、以下の一般的な法則である。
(1) 感染拡大のリスクは、人々が、互いに意図して会う人々からなるコミュニティの内側だけで生活している限り、顕著に抑えることができる
(2) もし、それ以外の、すなわち意図せざる不特定の人々と接触してしまう場合も、(1)の人々と同数未満に抑えられれば、感染拡大リスクは相当抑制できる
例えば、キャバクラではスタッフのテーブル間移動を制限し、居酒屋では一見さんお断りにすることの方が、「夜の街は22時閉店」より実質的な効果が期待できる。不審人物の侵入を防ぐセキュリティ技術の重要性も、いっそう増すであろう。家庭経由の拡大感染は、構成員の家庭外での接触の結果であることも理解しておくべきだろう。
しかし、スポーツで対外試合を、ビジネスで営業や異業種交流を、学校では新学期の授業を控えてしまうと、社会の創造性と生産性を維持する上で致命的な問題となる。この問題を解決する糸口として、ここでは講演者が9年前に実施したワークショップの講評中に吉川弘之氏(東京大学元総長)が着想した「予備的邂逅」という概念を振り返る。
予備的邂逅とは、人々が実際に顔を合わせる前に出し合った情報の接点を可視化し、出会いの価値を察知し、コミュニケーションを深め合う相手を選ぶことである。その実現方法は、様々に生まれてくることであろう。ここでは、予備的邂逅のための技術として、人々の創造的出会いを「データジャケット」を用いて促進するオンラインデータ市場の仕組みも紹介する。

 

●COVID-19流行に学ぶグローバル化時代の隣国像について
山田憲彦

COVID-19の感染拡大には、著しい地域差が確認されている。我が国を含む東アジア諸国は、人口当たりの感染者数や死亡者数が、欧米と比較すると、幸いにも非常に低値に留まっている。京都大学の山中教授らは、この背景要因を総括してファクターXと呼び、遺伝的背景、交差免疫の状況、生活習慣等の関与が想定されている。ソーシャルディスタンス習慣の推奨(時に強制)、就学・就業制限、戒厳令等の封じ込め施策、国内交通手段の遮断、出入国制限等の社会的・行政的対応の内容や実施時期も、感染拡大パターンの地域差・国家間差の発生に、多大な影響を与えていることが想定されている。しかしながら、各施策を定量化した上で比較する事はテクニカルに難しく、そのため、各施策の効果を客観的に評価することは非常に困難とされている。
先般、オックスフォード大学のグループは、世界(160以上の国及び地域)各国の施策を統合化し日毎にスコアー化したデータベースを構築、公表した。筆者は今回、我が国をはじめG7諸国や台湾等、特徴的な対応を行った国・地域等のデータを同データベースより収集し、分析を試みた。その結果、早期に対応を実施した国や地域と、感染拡大を抑制できた地域とが、概ね一致することを確認できた。これらの結果は、グローバル化時代の感染症流行管理においては、感染流行地(エピ・センター)との物理的な距離に惑わされることなく、「全ての国が、事実上隣国である」という現実を迅速に施策として反映させる効果を示唆するものである。また、我が国より格段に厳しい感染状況の中で、この様な莫大な調査研究を着実に企画実施できる英国学術の底力にも、改めて強烈な印象を受けた。

 

●日本の死因究明制度と新型コロナウィルス
近藤稔和

わが国における年間死亡数は、人口の高齢化を反映して増加傾向にあり、2017年には134万人に達した。また、これに伴って、警察における死体取扱数も2003年に4,601体であったものが、2017年には8,157体と,約1.8倍に増加した。
わが国の死因究明には、「司法解剖」と「監察医解剖」しかなく、監察医制度がある5都市以外では、司法解剖しか解剖による死因究明は行えなかった。我が国の医療制度は世界に誇れる国民皆保険制度であることは言うまでもないが、その一方で死因究明制度については、欧米先進諸国のはるか後方に位置していると言わざるを得ない。このことが、死者に対する尊厳を大きく損なうことになっていると言っても過言ではない。死因究明としての死体検案・解剖は、人(ひと)として受ける最後の医行為であることから、我が国においても欧米先進諸国に勝るとも劣らない死因究明制度の整備が求められてきた。
2012年6月には、死因究明2法、即ち死因身元調査法、旧死因究明推進法が成立。現在は、「司法解剖」、「監察医解剖」に加え、「死因身元調査法解剖」が実施されるようになった。しかしながら、旧死因究明推進法が時限立法であったため2014年9月に失効。その後の死因究明制度の整備は迷走し、このままでは我が国が死因不明社会であるとの汚名を被ることさえ危惧されていた。このような状況を打破するため、新たに死因究明等推進基本法が2019年6月に成立(2020年4月施行)。「医師等による死体の解剖が死因究明を行うための方法として最も有効な方法である」と明記され、解剖の最重要性が示されている。
今回は、現代日本の死因究明の実情と展望について、新型コロナウィルス感染と関連づけながら解説したい。

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