医療ガバナンス学会 (2021年8月24日 06:00)
東京理科大学基礎工学部名誉教授
山登一郎
2021年8月24日 MRIC by 医療ガバナンス学会 発行 http://medg.jp
都の公表新規感染者数情報中、無症状者の割合がこれまでの20-30%程度から7月下旬には10%台に落ちたと報じられました。
( https://news.yahoo.co.jp/articles/fe78d7116f4e72ba6196d5ea82f980e55cc8f62a )
この記事では、その原因として、保健所機能逼迫により濃厚接触者等の検査が行き届かなくなったせいなのではないか、と推測しています。
しかし、先のメルマガに書きましたように、都では行政・保険適用検査分を公表新規感染者数として計上し、民間自費検査での陽性判明者を再度公的検査で陽性確定して公表新規感染者数に算入しています。ただ、公表新規感染者数中、民間自費検査経由かどうかの内訳は見えない化されたままです。その現行制度の欠陥が露呈したのではないかと疑います。
先のメルマガVol.158に挙げたネット記事、
( https://news.yahoo.co.jp/articles/cbc7ffdf4069a76bb0026c6fd388296efc6f65eb )
では、都の民間自費検査件数や陽性率が、8月1週目は日に7万件ほど、陽性率3%とのことです。その3%陽性率を市中感染率に近いと考えると、都の市中感染者数は40万人になります。30人に一人の感染者です。そして民間自費検査では日に7万×0.03≒2千人が無症状者として判明しているはずです。先のメルマガVol.158では、最近の公表新規感染者数5千人中の2千人が無症状者であるとして分析しました。しかしその2千人の無症状者が公的検査を再度受診するかは個人の判断に任せられています。さて、最近の公表新規感染者数5千人の10%は500人程度でしかありません。つまり、民間自費検査経由無症状者の公的検査における陽性確定が2千人見込まれるのに、実は500人程度しか特定されていないことになります。
最近の自宅療養者の医療逼迫による入院不可・死亡の事例報告多発を受けて、民間自費検査での陽性判明者の多くが、公的検査による自宅療養などの拘束を嫌い、ただ単に自宅待機などして公的検査を受けなくなったためではないかと疑います。彼らの一部は、市中での感染拡大にも寄与してしまっているのでしょう。
緊急に注意喚起を促したいと思います。つまり、都では、もはやこのままの検査体制では、検査すべき対象もダダ漏れになっており、想定通りのコロナ対策にはならず、感染拡大は野放し状態になっているのではないかと恐れます。あとは「自助努力」だけで、各自十分気をつけて日常を過ごすほかないように恐れます。これまでも、的確な情報収集もせず、むしろ隠蔽し、その情報を基にして科学的に意味のある分析もできず、単に都民の自粛・時短・休業要請など都民にばかり負担を押しつけて、もはやコロナ対策の体をなさないままで来てしまったのではないでしょうか。
ただ、何度もあった感染拡大に対して、多分緊急事態宣言などはほとんど無効であり、むしろ感染者増の情報に接した都民・国民が、危機感を募らせて自主的に自粛的行動をとってきたからこそ、それぞれの感染を抑制できてきたのではないかと推測します。だから、今回の爆発的感染拡大、都や政府のコロナ対策崩壊露呈状況においても、やはり日本国民の皆さんは、政府自治体専門家報道などより数段冷静的確に状況を判断して、適切有効な行動を採り、この第5波も今後感染縮小に向かうと期待しています。政府自治体専門家には、先のMRICのVol.121 ( http://medg.jp/mt/?p=10357 )に書いたような科学的コロナ感染症対策に向けて、反省し脱皮して頂けることをお願いします。