医療ガバナンス学会 (2024年6月28日 09:00)
NPO法人筋痛性脳脊髄炎の会
理事長 篠原三恵子
2024年6月28日 MRIC by 医療ガバナンス学会 発行 http://medg.jp
2022年1月には「“コロナ後遺症”外来担当医に知っていただきたいこと」(http://medg.jp/mt/?p=10710)と題して、同年12月には「COVID-19を契機に高率でME/CFSを発症する可能性が明らかに」(http://medg.jp/mt/?p=11411)
と題する記事を、MRICに掲載していただきました。
最近、長期に及ぶLong COVID患者の約半数は、ME/CFSの診断基準を満たすとする論文や報道(https://bit.ly/3RzRxEb)が相次いでおり、世界的に注目を集めています。
米国屈指の医学諮問機関である全米科学・工学・医学アカデミーズ(NASEM)は、6月に2つの報告書を発表しました。一つはLong COVIDの定義、もう一つはCOVID-19の健康への長期的な影響に関してです。
NASEMのLong COVIDの定義では、ME/CFSを、COVID-19を契機に発症する(診断できる)疾患のリストに挙げています。また、265ページに及ぶCOVID-19の長期的影響の報告書は6章から構成されており、5章では「Long COVIDに類似した慢性疾患」について書かれています。特にME/CFS と線維筋痛症(FM)に焦点を当てており、COVID-19を契機に発症する疾患として、この2つの疾患を重視していることがわかります。
このような中、ME/CFSに対する医師主導治験が、国立精神・神経医療研究センター(NCNP)において、今夏に開始されようとしています。他の難治性疾患でも安全性が確認されているリツキシマブという薬の治験です。ME/CFS は、免疫が自律神経系を攻撃して炎症を起こすのが原因の一つと考えられており、リツキシマブには免疫細胞による自分の体への攻撃を抑える働きがあります。
以前にノルウェーで治験が行われたことがあり、第二相試験において29人の患者のうち18人に非常に良い又は中程度の応答が見られ、36ヶ月の追跡終了時に11人に臨床的寛解状態が継続していました。ME/CFSは世界的に治療法が確立されておらず、日本で製薬会社の全面的な協力のもとに治験に再挑戦することは、世界中の患者たちにも大きな希望を与えることでしょう。
当法人が加盟するThe World ME Allianceでは、世界中で少なくとも5500万人(控えめな数字)がME/CFSに罹患していると推計しており、1億人を超える可能性もあります。しかし、2022年12月に成立した改正感染症法の参議院の附帯決議に、COVID-19とME/CFSの研究の推進が盛り込まれているにも関わらず、未だに国は研究費を出していません。
そこで、当法人では、5月末に開催された第65回日本神経学会学術大会の患者会ブース出展に向けて制作した動画を当法人のHPで公開し、この状況を訴えていますので、是非、ご覧ください。https://www.youtube.com/watch?v=s8D6vkg1Oxs
<参考資料>
A Long COVID Definition by全米科学・工学・医学アカデミーズ
https://nap.nationalacademies.org/catalog/27768/a-long-covid-definition-a-chronic-systemic-disease-state-with
Long-Term Health Effects of COVID-19 by全米科学・工学・医学アカデミーズ
https://nap.nationalacademies.org/catalog/27756/long-term-health-effects-of-covid-19-disability-and-function