医療ガバナンス学会 (2009年1月31日 09:48)
高久史麿
※この記事は月刊誌「安全と健康」
ます。
医療ガバナンス学会 (2009年1月30日 09:48)
東京大学医科学研究所
先端医療社会コミュニケーションシステム社会連携研究部門
上 昌広
今回の記事は村上龍氏が編集長を務めるJMM (Japan Mail Media) 1月28日発行の
記事をMRIC用に改訂し転載させていただきました。
医療ガバナンス学会 (2009年1月27日 09:50)
千葉県がんセンター長の経験からみえてきたこと
千葉県がんセンター センター長
竜 崇正
医療ガバナンス学会 (2009年1月26日 09:50)
~がん難民時代~
東京大学医科学研究所
先端医療社会コミュニケーションシステム社会連携研究部門
准教授 上 昌広
医療ガバナンス学会 (2009年1月24日 09:51)
厚生労働大臣 舛添要一殿
日本さい帯血バンクネットワーク会長 中林正雄殿
日本造血細胞移植学会理事長 小寺良尚殿
日本造血細胞移植学会 会員
同・在り方委員会 委員
平岡 諦
医療ガバナンス学会 (2009年1月21日 09:52)
―
小児科医 江原朗
医療ガバナンス学会 (2009年1月20日 09:55)
過去4回にわたって東京都立墨東病院妊婦受け入れ不能事件の背景
明してきました。これまでの配信で、
ると主張してきました。この主張は、
責任逃れのようにも聞こえるでしょう。
者は甘えている。たるんでいる」
に、医療界が自律し、改善しなければならない点は多々あります。
しかしながら実際、
されることは、医療を崩壊させる最大の危険因子なのです。
には、医療者だけの努力では不可能で、
のためには、医療に関する情報開示を徹底させることが必須です。
事はアカデミズムとジャーナリズムの責務ですが、
る医師・研究者が、
も込め、これから数回にわたり、
す。
●医療訴訟数の増加
近年、医療訴訟は急増しています。例えば、
たに提起された医療訴訟数は597件から912件へ、1.
清成著、『よくわかる医療訴訟』、毎日コミュニケーションズ)。
化を受けて、
集中部が設立され、その後、千葉、名古屋、
これは医療訴訟の増加に対する裁判所の対応ですが、
弁護士や検事にも医療に関係する人が増えてきています。「
(医者が増えるほど、医療費が増える)ではありませんが、
療に関係する司法関係者が増加することが、
を心配する学者もいます。
●産科医の約半数が一生の間に1回は訴訟に巻き込まれる
今回は、産科の医療訴訟を対象に議論しましょう。まず、
訟の実数は、どの程度でしょうか。最高裁のHPによれば、
科における1年間の既済訴訟事件数の平均は139件です。
人程度ですから、100人の産婦人科医が1年間働くあいだに1.
ることになります。医師の実働を40年と仮定すれば、約60%
の間に最低1回は訴訟に巻き込まれる計算です。
を扱う産科と子宮がんや不妊を扱う婦人科に分かれますが、
方が高いため、この60%
訴訟形態についても、
たが、最近では被告として病院と連名で担当医が名指しされる(
る)ことが増えています。皆さんは、
まれる職業というのは想像できるでしょうか? 私の知る限り、過半数が訴えら
れる堅気の職業は聞いたことがありません。
訟リスクは高いと言わざるを得ません。
●産科、外科は医療訴訟のハイリスクグループ
では、産婦人科と他の診療科では、
最高裁のHPの資料によれば、
人科14.5、形成外科 14.0、 外科 9.5、 整形外科 6.3、 泌尿器科 4.0、 内科
3.6、 耳鼻科 2.5、 精神科2.4、 眼科 2.3、 小児科 2.2、 皮膚科 1.9、麻酔
科 1.5、歯科 1.0となっています。
産婦人科と形成外科が高リスク群、外科系が中リスク群、
器系(眼科・耳鼻科・皮膚科)を低リスク群に分類できます。
む医師が減ったといわれていますが、
しているのかもしれません。
●産科と形成・美容外科
ところで、形成外科と産婦人科の訴訟数が同程度であることを、
考えでしょうか。形成外科も、産科同様に訴訟が濫発されて、「
なっているのでしょうか?ところが、
違うようなのです。厚労省によれば、
には9,592人へ10%も減少していますが、
には1,909人へと16%も増加しているのです
(http://www.mhlw.go.jp/toukei/
http://www.mhlw.go.jp/toukei/
うな違いが生じるのでしょうか。形成外科と産科の比較は、
をもたらしてくれそうです。
まず、形成外科の歴史を簡単に説明しましょう。形成外科とは、
形や異常を、形態的および機能的に修復しようとするもので、
塹壕戦で顔面を損傷した兵隊を治療したことが始まりです。
機関銃や大砲が普及し、弾幕を避けるために、
が主流になりました。塹壕戦では、
傷する兵隊が続出しました。
西部戦線に配属されてこの状況を目の当たりにしたイギリスの軍医
ギリスは、帰国後に軍病院に専用病棟を創設し、5,
あたりました。従来、
これでは治癒過程で創部が収縮し、顔面が変形してしまいます。
できるだけ元の形に復元すべく皮膚移植法等様々な方法を開発し、
確立しました。現在、形成外科医は、顔面損傷だけでなく熱傷、
先天異常などの様々な外傷・疾病を治療しています。
くの患者にとり不可欠なものと認識されるようになり、
バーされています。
形成外科が特殊なのは、豊胸術、隆鼻術、
美容外科は健康保険が効かず、完全な自由診療のため、
く形成外科医は高収入になります。例えば、
位に位置した医師には美容外科医が多かったと言われています。
産は健康保険が適用されないにも関わらず、様々な方法を通じて、
統制を受ける産科領域とは対照的です。また、形成・
して急患や当直の回数が少なく、労働条件は良好です。
外科は訴訟のリスクは高いのですが、
る医師が急増しています。これは、
バランスされているとみることができるかも知れません。
形成外科を参考にすれば、
科の勤務医の給料を、形成・
しれません。国民感情で問題は残すものの、もし、
食い止められるなら、
ちなみに昨年、人事院が国立病院に勤める医師の給与を平均11%
勧告しました。
性は焼け石に水と言わざるを得ません。
●医師賠償責任(医賠責)保険
ところで、増加する医療訴訟に対して、
うか。実は、他の分野と同様に、
険)という保険商品が存在し、リスクをヘッジしています。
がおありの方は、
とをお奨めします(http://mric.tanaka.
医賠責保険とは、医療事故に関し医師に過失があり、
これを補償するものです。賠償保険ですから、医師・
金は支払われません。しかしながら、
ため、医療者と患者・家族の主張が真っ向から対立し、
することも稀ではありません。この状況は、患者・
体質に、
主張も双方の立場を反映しており、医療事故は患者・
た姿に見えるのでしょう。その状況は、黒沢明監督の映画『
世界に似ています。
一方、日本の病院経営者の多くは、
とを嫌がります。そのため金銭で決着がつく問題であれば、
示談をしようとする傾向があります。
てば完全なモラルハザードですが、これまでは医療事故・
ため、保険会社も大目に見てきました。
例えば福島県立大野病院事件では、福島県幹部が”慣例通り”
いて遺族に補償するため、県の事故調査報告書に、
書き方をしたと言われています。それが仇となって、
家族は医療者への不信感を抱き、
その調査報告書を参考に逮捕・起訴へと進んだのですから、
島県警は、この点だけ考えると同情の余地がありますが、
であったと言わざるを得ません)。
は、早急に改善する必要があります。
●危機に瀕するわが国の医賠責
では、わが国の医賠責の実情はどうなっているのでしょうか。
責保険が最初に発売されたのは1970年代で、
京海上日動、三井住友、日本興亜、
の医賠責保険も大枠は同じで、
象とし、通常は医療事故一件あたり最大1億円、期間中(
が補償されます。ただし、繰り返しますが、
失の場合は補償されません。
一方、医賠責に加入している医師が支払う保険料は定額で、
す(2008年現在)。これは後述する米国の医賠責では、
じて掛け金が変動し、産科医や救急医の年間の掛け金が1,
あることとは対照的です。また、米国の医賠責保険では、
診療の質を満たすため,
です。特に産科では,
り,
せん。もし、米国の医賠責保険の制度を、
医師不足に拍車がかかったり、
性があります。
このように、わが国の医賠責は医療事故・
計されていません。もしも、医療訴訟が増加し、
医賠責は容易に破綻することが予想されます。事実、
恒常的に赤字であり、
●米国での懲罰的損害賠償
米国は言わずと知れた訴訟大国です。
1970年初頭の40万人から急速に増加しています。これは、
2.5万人)の50倍です。訴訟数も多く、
おり、日本の新規受付数が15万件ですから100倍以上です。
米国の民事訴訟の特徴の一つとして、
そもそも、民事訴訟における賠償金額は「(所得)X(
という単純な方程式で計算されるものですから、
賠償額が高額化するのは当たり前です。
これに加えて米国では、加害者の行為が強い非難に値する場合、
を加えて将来の同様の行為を抑止する目的で、
の損害の補填としての賠償に上乗せして支払いを命じることが認め
これは、1992年、
ヒー事件での270万ドルの賠償が有名ですが、
性麻痺の出産に関して帝王切開をしなかった医師のミスを認め、
金を認める判決が出ています。このように米国では、
ることが多く、
ちなみに日本でも医療訴訟の賠償額は高額化しつつあります。
は民事訴訟を通じた弱者救済という視点に立っているため、
える判決が出ることが珍しくなくなりました。
では全く米国と同じ状況で、欧州、特に北欧とは異なります。
●医賠責の破綻が医療崩壊を招く:2001年ミネソタ州のケース
医賠責保険は、
賠責に加入しているから医者は安心して医療を行うことができると
ではありません。もし医賠責保険が破綻したら、
なります。ところが、
基盤は極めて脆弱です。
過去にアメリカでは、
ました。この件に関する詳細をお知りになりたい方は、
医療を亡ぼす』(医学書院)をお奨めします。
簡単に言いますと、2001年ミネソタ州の「セント・ポール・
社」が年間10億ドルの損失を被っていると主張して、
発表しました。SP社の撤退以降、
くなりました。
SP社の医賠責からの撤退には、
影響があったのは、1970年以来の医療訴訟の増加、
テロ事件により保険者が支払う再保険料が暴騰したことと言われて
みに米国のこのような状況は、医療訴訟の増加、
類似しています。
2001年当時、SP社は加入医師4.2万人と、
ら、同社の医賠責保険撤退が医療界に与えた影響は甚大でした。
退を契機に、医賠責保険の掛け金が高額化しました。この影響は、
療医に特に顕著で、
このため、医賠責保険料が高いネバダ州を離れ、
に転出する医師が続出しました。カリフォルニア州は、
非経済的損失に対する賠償金(慰謝料)
施しているため、医賠責保険の掛け金が低額だったので、
働けると判断したようです。また、
かにも、
この結果、ミネソタ州では開業医から専門医まで、
提供する医師が激減することになりました。
このように、医賠責保険が破綻し、
た医師が続発したため、
医療へアクセスするための費用が高額化しました。
通じて全米に報道され、米国民の中に「
かねない」というコンセンサスが形成され始めました。それは、
訴訟に対する反動として、全米に様々な動きをもたらしました。
次回の配信でご紹介させていただくつもりですが、
行錯誤をレビューすることは、
す。つまり、私は、
でも近い将来に医賠責保険が破綻し、その結果、
可能性が極めて高いと考えています。医療を崩壊から救うため、
ありそうです。
医療ガバナンス学会 (2009年1月19日 09:57)
鈴木寛(通称すずかん)
医療ガバナンス学会 (2009年1月18日 09:56)
弁護士 木ノ元 直樹
医療ガバナンス学会 (2009年1月15日 09:58)
東京大学医科学研究所
先端医療社会コミュニケーションシステム社会連携研究部門
児玉 有子