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Vol.22021 コロナ感染症検査体制の崩壊(再生を願って)

医療ガバナンス学会 (2022年2月2日 06:00)


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東京理科大学基礎工学部名誉教授
山登一郎

2022年2月2日 MRIC by 医療ガバナンス学会 発行  http://medg.jp

今オミクロン株が急拡大中だ。市中無料検査所でも検査キットが不足する事態になりつつある。先日和田先生のメルマガ(Vol.22013)で、有症者およびその濃厚接触者対象主体の行政・保険適用検査と非感染・無症状者対象中心の民間検査の区分けについて資料を提供された。公表新規感染者数統計に民間検査分は算入されていないのだ。

私も再三訴えてきたことだ。一昨年のコロナ感染症第1波後には、プロ野球やJリーグなどのイベントでの民間検査が容認された。そうした民間検査は、基本的に非感染者対象なので、医療行政とは区別し、医療行為とは見なされない。そのため、検査陽性判明者は、保健所経由の行政検査を再受診して感染確定され、公表新規感染者数に算入される。その後高齢者施設やイベント会場などでもそうした検査が普及しだしたが、同じ枠組みで捉えられた。一昨年12月には市中民間自費検査がスタート、年末に掛けて普及した。帰省目的などで多くの人が利用し、その帰結として、結局年末年初の感染拡大第3波に見舞われたと推測した。

そうした市中民間検査の検査数や陽性率などが市中感染状況を知る上で貴重な情報であるにもかかわらず、この間ずっとその検査情報の収集も公開もされず、国民は市中感染状況を知らされずにおかれたままだった(Vol.102)。

そして昨年末、今度は市中無症状対象無料検査がスタート、第3波と同じ経緯で現在の第6波に見舞われると警告したが(Vol.22003)、オミクロン株に置き換わり今も急拡大中だ。
ただ、今度はその市中無料検査情報が大阪や都でも公開されるようになった(和田先生のメルマガVol.22016)。

小さなことだが、その市中無料検査の陽性判明者は、建前上これまで同様再度行政・保険適用検査をしてやっと感染確定され、公表新規感染者数に算入されるのだろう。すると、この陽性者は統計上、感染者として重複して二重に統計に表れたことになる。こんな杜撰な情報処理が許されるのだろうか。

さて、大きな問題だ。最近1月24日、厚労大臣が「検査で陽性の人は、医師の診断なく新型コロナ感染と判断し、自宅療養に移ることを認める」と発表した。この検査は市中無料検査などの民間ベースの検査である。するとこれまでの検査制度を度外視しており、この陽性者は保健所経由での感染者として確定はされず、医療処置の範囲外におかれることになる。医療機関や保健所の負担軽減にはなる。でもそれがこれまでの厚労省や分科会のコロナ感染症対策と矛盾しないのだろうか。
そしてこの事実は、実は厚労省も分科会もついにコロナ対策がお手上げ状態であることを認めたことを意味するのではなかろうか。固執してきた感染症医療行政の一環としての検査制度を自ら放棄し、結局国民に丸投げしていると映じる。
先の大戦終末期、参謀本部は同じくお手上げになって戦争遂行を放棄し、一億総玉砕を叫ばざるを得なかった。沖縄では、何ら救いの手も差し伸べずに、自決を促したのだ。今回のコロナ検査に関する発言・発想自体、同じように国民を見捨てることに見えてしまう。無恥、無能、無責任のそしりを免れ得ないと思う。
今や感染急拡大中の日本国民を救うには、コロナ対策本部の更迭総入れ替えが喫緊に必要とされているのではなかろうか。

欧米の対策が単純明快、分かりやすく学ぶべき点が多々あると思う。
Vol.22009の最後にも記載した。これまでの厚労省の検査制度など破棄し、官民協力し合わせて全検査の拡充と一律の情報収集・公開をすべきだろう。(ちなみにVol.22003記載フランスの例では、12月25日155万件検査で10万人の陽性者検出。対して、都では現在でも行政検査3万件程度のままだ。全国では現在最大38万件可能とのこと。)
こうした情報に基づき、Vol.069&070記載の倍加時間も見積もられ、科学的な対策を取ることができる(Vol.121)。しかも市中感染状況情報を国民も共有でき、自ら判断して行動制御し、感染縮小にも協力して頂けるはずだ。「マン延防止」など不要、経済活動も普通に営めると期待する。
またずっと言われているマスの療養施設準備も是非速やかに実施して欲しい。それにより、すべての感染陽性者を隔離でき、医療への容易なアクセスも可能になる。当然役所・保健所も容易に健康観察することができる。入院治療が必要な有症者だけは全員(100%)入院させる。欧米のように入院率は1%未満になるはずだ(Vol.181)。その結果、騒がれている病床逼迫や医療崩壊も、救急搬送困難事案なども防げると期待する。
是非速やかなコロナ対策担当者および方針の転換を期待する。
Vol.069  http://medg.jp/mt/?p=10224
Vol.070  http://medg.jp/mt/?p=10226
Vol.102  http://medg.jp/mt/?p=10313
Vol.121  http://medg.jp/mt/?p=10357
Vol.181  http://medg.jp/mt/?p=10524
Vol.22003  http://medg.jp/mt/?p=10712
Vol.22009  http://medg.jp/mt/?p=10729
Vol.22013  http://medg.jp/mt/?p=10743
Vol.22016  http://medg.jp/mt/?p=10752

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